![]() |
![]() |
![]() 田中 JAFは、「道路特定財源の一般財源化反対、一般財源化するのであれば減税すべき」と言ってきました。ところが5月13日の閣議決定(*1)で、来年度には一般財源化されることになっています。 杉山 道路特定財源は受益者負担の制度で、納めた人たちが納めた分のサービスを享受するべきものです。これを一般財源にすることは、その根本を否定することになる。私は一貫して、それはおかしいと言ってきました。 森永 つまり、国は「あなたたちのために道路を造るんだから我慢して払いなさい。払えば渋滞も減るし、快適に移動できるようになるから」と言って負担させてきたわけです。だから同じ燃料でも、ディーゼル機関車の軽油には課税しないし、トラクターや漁船の軽油にも課税しない。公道を走らないから道路特定財源としての税金は払わないでいいですよ、という理由です。しかし一般財源化したら、ディーゼル機関車と自動車で区別するのはおかしくなる。なぜ車だけが課税されるのか、説明がつきません。 杉山 一般財源化という話が出てきたのは、道路特定財源の税収額が大きいから、財政再建のためには非常に魅力的だったという背景があります。しかし、そこには納税者がどう考えているかという視点がすっぽり抜けてしまっている。5月13日の閣議決定には、これまではあった「納税者の理解を得つつ……」などの表現さえ、なくなっているんですね。 森永 高齢化が進んだ社会で医療費や年金等の社会保障財源がより多く必要になるのは、やむを得ないことです。だから「どういう税制の体系で負担するのがいいと思いますか?」と国民に聞くべきです。そのとき、社会保障の財源をドライバーに押し付けようというやり方に納得する国民はいないと思うんです。 森永 家計調査によると、1世帯あたりのガソリン代は、町村部は東京都区部より5倍も多い。ということは、税金も5倍の負担をしているわけです。これを町村部の道路整備に使うならまだ納得できますが、社会保障などの一般財源にするとなると都区部の5倍の税金をかけることになる。それが社会正義として正しいのか? 田中 道路特定財源の一般財源化は、都市と地方の格差を助長する側面もあるのですね。 森永 地方に行くと、基本はお父さんの車とお母さんの軽乗用車と農作業用の軽トラという3台セットがないと生活が回らないんですよ。車というのは何よりも生活必需品になっているんです。その証拠に、年収300万円台前半層でも、乗用車の普及率は3分の2以上あるんですよ。 杉山 地方では都市部より所得が低いにもかかわらず、自動車を複数台持たないと生活できない。その複数の車に対して課税される。一般財源化の考えは、まさに地方いじめが顕著に出た例ではないかとさえ思います。 |
![]() (*1) 5月13日の閣議決定……「道路特定財源等に関する基本方針」のこと。道路特定財源の無駄遣いの徹底的排除、道路特定財源制度の廃止と来年度からの一般財源化が明記された。暫定税率は、「今年の税制抜本改革時に検討する」とされた。 (*2) 暫定税率……緊急の道路整備を目的として、道路特定財源の揮発油税や軽油引取税、取得税、重量税などに課された、本則の約2倍の税率。導入以来、30年以上続いている。今年4月に一時ガソリンが安くなったのは、この暫定税率の期限が切れたため。 (*3) 自動車関連税が9種類……取得段階の自動車取得税、保有段階の自動車重量税、自動車税、軽自動車税、走行段階の揮発油税、地方道路税、軽油引取税、石油ガス税、そして消費税の9種類を指す。 (*4) タックス・オン・タックス、二重課税……タックス・オン・タックスは、揮発油税を含んだガソリン価格に消費税が課され、税に税を課していること。二重課税は、自動車の購入時、消費税と似通った趣旨の自動車取得税が課されること。 (*5) 車体課税……自動車の取得、保有段階での課税のこと。自動車重量税は先進国で日本だけ、自動車取得税が課される国も少ない。日本の車体課税は欧米諸国の約2〜38倍。 |
森永 「要らない道路は造らなくていい」というキャンペーンを、メディアがさんざんやりました。しかし、たとえば東国原知事が「宮崎に高速道路来てくれ」と主張していますが、九州の仕事を多くやっている私には理解できます。大分から福岡なら高速道路を走ればすぐですが、大分から宮崎はもう、その、地獄ですよ(笑)。無駄な道路を造ってはいけないのはその通りですが、造る必要がなくなったというのは嘘ですね。 杉山 都会にも、もっと整備しなければいけない所があるんですね。道路整備の問題は、どうも必要な道路と無駄な道路の定義がはっきりしない。無駄遣いとか必要ない道路は確かにありました。それは是正しなければいけない。でも、それで制度自体を否定するのではなく、道路特定財源制度の本質を踏まえて、その制度をどう運用すれば無駄がなくなるのかを考えるべきではないでしょうか。 田中 大規模災害時のバックアップ道路をどうするかという発想も必要ですし、歩道の充実など既存の道路の質を上げる議論も不可欠ですね。 杉山 逆に、道路整備の必要がないなら、受益者負担の原則からいって、財源も必要ないわけです。このことを含めて、なぜ道路特定財源が、暫定税率(*2)もそのままで一般財源化されてしまうのでしょうか。すでに、自動車ユーザーは一般財源にも約2兆円、自動車税や軽自動車税等で払っているというのに。 森永 一般財源としては、もうそれで十分でしょう。どの道路を優先して整備すべきかという国民的な議論をせず、ただ要らなくなったからといって一般財源にするのは、もう泥棒に近いと思いますけどね。 田中 そもそも特定財源はそれに見合う事業によって税額等が決まるべきで、事業がないなら税額等を減らすか、なくすべきですね。 杉山 自動車関連税が9種類(*3)あることを知らない人が過半数で、その一つひとつも、タックス・オン・タックスになったり二重課税(*4)になったり、おかしなものがあるわけです。暫定税率も今年、国会で議論になって、ようやく知られたようです。 森永 4月に暫定税率が一度廃止されたことが、国民の意識改革の上ではすごく大きかった。この車に関わる税金の問題を中長期的な視点も含めてどうするか、国民に真剣に問う必要があると思います。 田中 我が国の税金は取得時と保有段階で重税感がありますが、簡素化して使用段階で課税するようにまとめれば、分かりやすいと思うのですが。 杉山 民主主義国家は、私有財産を認めているわけですし、自動車を所有するだけで多大な税金を課すのは私権を制限することにもなります。それなのに、我が国では車体課税(*5)がべらぼうに高い。一般財源化の議論をする前に、現在の税制でも改善すべきところはいっぱいあります。本当に9種類も必要なのか? 暫定税率はどうするのか? その議論がなくて一般財源化なんて無茶です。 森永 税金だけでなく高速道路の使用料も含めて、全部まとめて「車に関わるコストをどう取れば一番公平なのか?」を真剣に議論すべきですね。 田中 現状の見直しをせずに一般財源化されますと、気がついたら大変な状態になっていたということにもなりかねません。自動車にかかる税金の実情を、ユーザーに知っていただくよう活動していきたいと思います。 (『JAFMate』2008年10月号から転載)
|
|
![]() |
![]() |
![]() |