JNCAP TEST REPORT
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NCAPとは?歩行者頭部保護性能テストとは?

JNCAPに新テストが追加:歩行者頭部保護性能テストを実施

 2004年公表の自動車アセスメント(JNCAP)から新しい試験が追加された。ヨーロッパのEuroNCAPでPedestrian Protectionとしてすでに行われている「歩行者頭部保護性能テスト」が日本にも上陸したのだ。



クルマの歩行者頭部保護性能とは?

交通事故での死傷者の中で、歩行者が死傷する事故は全体の7%。ところが、歩行者が死亡に至るのは、交通事故での死者全体の28%にも達するという(財団法人交通事故分析センター 平成13年度報告)。交通事故で死亡する歩行者の比率が高すぎる。交通事故全体での死者数を少なくするには、歩行者の死者を減少させることにも目を向けるべきだ。それでは、歩行者の死者を減らすためにクルマ側でできる対策とはどのようなものがあるだろう。
クルマが歩行者に衝突した時、歩行者は足をすくわれるようにして車のボンネットに頭部を含む上体を強打する。その時、ボンネットがやわらかく、衝撃吸収材となれば、歩行者が受けるダメージは小さくなり、死に至る件数も減ると考えられる。あるいは、サスペンションなどの固い部材のレイアウトや、ワイパーなどのとがった部分がむき出しにならない工夫なども有効とされる。
歩行者がクルマに衝突してダメージを受けるとき、最も命にかかわるのは頭部だ。実際、交通事故で死亡する歩行者のうち、過半数が頭部を損傷して死亡しているという。頭部へのダメージを少なくするために、クルマ作りの現場で歩行者を保護できるような工夫を行う必要がある。歩行者頭部保護性能テストが導入された背景は、自動車メーカーにそのようなクルマの"歩行者頭部保護性能"を向上させるために努力を促すところにある。

歩行者頭部保護性能テスト。射出機から半球の頭部インパクタが打ち出される。空調の利いた試験室でのテストになり、インパクタも特に温められたりせず、室温のまま試験に用いられる。




クルマが歩行者にどれだけ傷害を与えてしまうのか。それをテストするのが歩行者頭部保護性能テスト。クルマを壁にぶつける衝突テストでダミーが使われているように、歩行者頭部保護性能テストでもダミーを用いてテストをする。ただし人間の形はしていない。人間の頭部に模した「インパクタ」という、このテスト専用の頭部型ダミーである。
インパクタは、大人の頭部に模したものと子供の頭部に模したものの2種類。それをボンネットに向けて叩きつけることで、インパクタが受けた衝撃を計測し、傷害値(HIC)を割り出して評価をする。
ボンネットに向けて叩きつけられる射出速度は35km/h。これは、クルマが44km/hで歩行者と衝突した速度に相当するという。
JNCAPは、保安基準より高度なレベルでの安全性能を試すというのがその趣旨。フルラップ前面衝突試験を例にとると、JNCAPでは保安基準より1割増の衝突速度で実施されている。今回から始まった歩行者頭部保護性能テストでも、その趣旨に則った衝突速度が採用された。
当初このテストが始められた際には、国の保安基準で歩行者保護は規定されておらず、衝突速度40km/hでの実施が検討されている段階だった。JNCAPでは法案化に先駆けて1割増の44km/hを想定したわけだ。その後2004年4月に、国は道路運送車両法の保安基準を改正し、インパクタ射出速度32km/h、衝突速度40km/hでの基準を制定している。ちなみにJNCAPの44km/hでの衝突はクルマ対歩行者の全事故の、およそ90%をカバーするという。
テストでは、ボンネットからフロントガラスに至るまでのエリアを15に分割し、基本的には、ひとつのエリアについて1回だけ頭部インパクタが叩きつけられる。ただし、メーカーの希望によっては、各エリアの追加テストが1回まで認められている。この場合、全てのエリアでメーカーが追加テストを希望した場合、最大30回の射出で1台の車の歩行者頭部保護性能評価が決まることになる。
あるいは、車種によって左右対称の結果が出ると判断された場合、テストが省略されるエリアもあるという。その場合は最少8回で評価が下ることもあり得るだろう。
インパクタが叩きつけられて損傷したボンネットやフロントガラスは新品に交換してから次のテストを行う。このボンネットやフロントガラスも、車両の入手と同様、市販品を購入することで公平性を保っている。

←射出機にセットされたインパクタ。先端に取り付けられた肌色の半球がインパクタ。傷害値が計測される ←1エリアは、4つのマスが一組。このマスのうちのいずれかにインパクタを打ち込むわけだが、メーカーからの希望があると、残りの3マスから次に打ち込むマスが選ばれる。




試験結果は、15に分割したエリアごとの傷害値を得点化し、これを総合して平均値による総合得点を算出、レベル5からレベル1までの5段階で評価する。レベル5は頭部に重大な障害を受ける危険性が約10%以下の確率、レベル1は危険性が約40%以上の確率となっている。レベルが高くなるほど、"歩行者にやさしい"車であると言える。

2004年公表19車種のなかから、19車種中第3位の評価(レベル3)を受けたトヨタのWiLL CYPHAを見てみよう。

図には15の各エリアがレベル別に緑色(レベル5)から赤色(レベル1)に色分けされている。色分けを見れば分かるように、ウィンドウガラスやボンネットの中心部などのレベルが高い=危険性が少ないのに対して、ピラーやボンネット基部などのレベルが低い=危険性が高い評価結果となっている。
ウィンドウガラスやボンネットの中心部のような"やわらかい"部分は、クッションのように衝撃を吸収することができるために危険性が少ない。一方で、ピラーやボンネット基部などの車両構造に直接かかわる"かたい"部分は、どうしても危険性が高くなるわけだ。車両構造は衝突安全性能に影響するため、"やわらかく"するにも工夫が必要だ。
ところで、当たり前だが、歩行者は衝突する瞬間に危険性の低い部分(例えば緑色の部分)を選択することはできない。このため、私たち消費者にとって実質的には総合得点と全体平均のレベル評価が判断の基準となる。本ホームページでもそのような趣旨から、車種別結果ページにはエリア別の色分け図は掲載せず、総合得点とレベル評価値のみを掲載している。
この点、エリア別色分けの意義は、メーカーに対する一層の努力を促すところにあると言える。例えば、ボンネットの大部分が緑色なのに、一カ所だけ赤色の部分があるというのは、何らかの理由で衝撃吸収の効果が発揮されていないということをあらわす。ボンネットを開けてみると、実はそこだけボンネットとエンジンルーム内の機器との空間が狭くて衝撃吸収力を弱めている……といった具合に。見てみれば分かるように、エリア別色分けにはボンネットを外してエンジンルーム内が分かる形で作成されており、問題点が視覚的に把握できるようになっている。興味のある方は、自動車事故対策機構のホームページで確認してほしい。

(2004.2.13=掲載)
(2004.6.22=国の保安基準制定と評価結果公表にともない該当箇所を加筆訂正しました)




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