電気自動車R1e、レガシィハイブリッド、リチウムイオンキャパシタetc
「走る楽しみ」を追い求めるスバルの次世代エコカー戦略
電気自動車「R1e」
真夏の陽射しがまぶしい8月18日の午後、東京お台場のホテルで、富士重工業(スバル)のマスコミ向け発表会が開催された。「SUBARU モビリティ技術プレゼンテーション 2005」と題したこの発表会、現在スバルが鋭意開発を進める次世代エコカー技術のお披露目会だ。
スバルは、次世代自動車のターゲットを電気自動車に定め、そのキーテクノロジーとして数年前からNECと共同でマンガン系リチウムイオン電池「ラミリオンバッテリー」の開発を続けている。そしてこのバッテリーを同社の軽自動車「R1(アールワン)」に搭載した電気自動車「R1e」を製作、年度内にもナンバーを取得して公道走行テストを行う予定だという。また、9月2日に発表された東京電力との共同開発計画では、R1eベースの業務用電気自動車10台の試作を予定している。今年10月に一号車が完成する予定で、順次業務に利用する形で公道走行テストを行っていく予定だ。
ラミリオンバッテリーは、他社製リチウムイオン電池に比べて、軽量かつ瞬発力・持続力を大きく向上させており、自動車の寿命(走行距離15万キロ程度)にも耐えられ得る長寿命も実現したという。「R1e」の走行性能は、カタログ値で最高速度時速120km、一充電走行距離(10・15モード)も現状120km・目標200kmと、タウンユースとしての軽自動車としては実用域に達しつつあるようだ。実用化の鍵は、さらなる性能の向上とともに、材料費は低いが手の込んだ製作工程によるコスト高をどのように消化するかだ。スバルでは2006年から、このラミリオンバッテリーの対外供給を開始する予定で、生産量・シェアの拡大によるコスト低下で、自動車用バッテリーへの供給を目指しているという。
電気自動車「R1e」とラミリオンバッテリーは、実は今年5月の自動車技術展でも発表されている。スバルの次世代エコカー戦略の主軸、既定路線とも言うべきもので、特別なサプライズはなかったわけだが、今回の発表会にはもうひとつ、エコカーファンにとって興味をそそられる発表がされた。新しいハイブリッド駆動システム「TPH」と、それを搭載した新型ハイブリッド車の2007年試験的市場導入の予定、さらにバッテリーにかわる新しい蓄電装置「リチウムイオンキャパシタ」の開発だ。
ハイブリッド駆動システム「TPH」
新開発のキャパシタ「リチウムキャパシタ」
「TPH」は、エンジンとATミッションの間に薄型10kwモーターを挟み込んだ、パラレル方式の新しいハイブリッド駆動システム。同社が研究を進めていたSSHEVは高出力を追求したハイパワーシステムだったが、「TPH」では市販化を念頭に、小型のモーターとバッテリーの使用量を抑えてコストパフォーマンスを上げた。スバルでは、市販車レガシィにTPHとラミリオンバッテリーを搭載したレガシィハイブリッドを開発、2007年には試験的に市場導入を行う予定だという。
ところでハイブリッド車では、減速時にモーターからエネルギーを得る回生によって燃費を向上させることができる。そこでコンデンサーを複数・巨大化したようなもので、電気を瞬間的に充電・放電することができるキャパシタを回生に利用すれば、従来バッテリーを使用していた場合に比べてより多くのエネルギーを回収することが可能となる。ただ、キャパシタはバッテリーに比べると電気を蓄えておくことが難しい。ハイブリッド車用として利用するには困難だった。
そこでスバルでは、新素材を利用してエネルギー密度を高めたキャパシタを開発した。「リチウムキャパシタ」だ。従来のキャパシタに、リチウムイオンを吸蔵させるプレドーピングという手法を採用することで、電気をより多くキャパシタ内に蓄えておくことを可能にしたという。従来品の約4倍という大容量を実現、しかも劣化に非常に強い特性を持っている。キャパシタの技術は日進月歩で進んでおり、新しい新素材による性能向上も見込まれている。このプレドーピング技術は、そのような新素材を正極に用いて性能を向上させた場合、それと競合せずに、理論上想定の倍以上の性能を引き出すことも可能だという。現状ではまだエネルギー密度の点で鉛電池のレベルに達していないが、スバルでは将来的にはハイブリッド車に利用できるレベルまでリチウムキャパシタの性能を上げていきたい考えだ。
「走る楽しみ」をモットーに、他社とは一筋違う動力システムを世に送り出してきたスバル。次世代エコカーの競争に本格参戦だ。
(2005年9月掲載)