コルトEV 2010年市販化を目指す!
三菱が電気自動車開発に乗り出す理由
5月11日、三菱自動車(三菱)は2010年の販売開始を目標に電気自動車の開発を進めていることを発表した。業績が落ち込んでいる同社が電気自動車の開発に力を注ぐのは、数あるクリーンビークルの中でも、環境・資源問題への効果が大きく、開発が比較的容易なため。従来、三菱は提携先のダイムラー・クライスラー(ダイムラー)と協力して燃料電池車の開発を進めてきたが、現在はダイムラーとの提携関係が薄くなり、また燃料電池車自体、業界内で早急な普及は難しいとの空気が強くなっている。一方、当面、クリーンビークルのスタンダードになりそうなのがハイブリッド車だが、同社はハイブリッド車の経験があまりない。ハイブリッド車で独走状態のトヨタに追いつくには、相当な技術開発と企業体力が必要で、今の三菱にはかなり厳しいと思われる。
そこで白羽の矢が当たったのが、同社が30年前から開発を進め、最近も他メーカーに比べて積極的に研究を続けていた"ピュアEV"とも呼ばれる電気自動車である。電気自動車は構造がシンプルで、100年前に自動車の主流であったほど。自動車としての基本的な技術は完成域のため、大メーカーでなくても取り組みやすく、開発コストも抑えられる。それでいて、クリーンビークルとしては理想的な性能を持ち、エンジンを搭載しないため設計自由度が高く、新しいデザインを採り入れやすい。
課題は、航続距離の短さと充電時間の長さからくる使い勝手の悪さ。それに価格である。これらは、技術的には、すべてバッテリーの問題。90年代半ばに、カリフォルニア規制の影響で、各メーカーがこぞって電気自動車を市販した時代があったが、当時の電池技術ではユーザーが満足する使い勝手は実現できず、またコストもかかりすぎ、普及には遠く及ばなかった。しかし同社は、ここ10年のバッテリーの性能向上と、さらに成長を続けていることを評価。電気自動車で勝負できると判断したようだ。
FRインホイールモーターのカットモデル。
展示されたモーター部分。
リチウムイオン電池モジュール。1個1個はかなり重い。これが22個搭載されている。
エンジンがなくなり、バッテリーとインバーターは後部に積んでいるため、フロント部分には何もない。空洞では味気ないので、物入れを設置したという。EVの強みである車体デザインの自由度を逆に印象づける形となった。
東京品川の本社で行われた発表会には、試作車のコルトEVが展示され、開発担当者から説明がなされた。その内容は従来の課題を克服できるようなサプライズはなかったものの、三菱が本気で市販化を目指していく姿勢をアピールするには不足ない内容だった。
試作車のコルトEVは14.8Vのリチウムイオン電池モジュールを22個直列して325Vのシステムを車体後部に搭載、FRインホイールモーターで走行する。航続距離150kmを実現しているが、同社としてはこの距離が市販化でもひとつの目安になることを指摘する。軽自動車ユーザーをターゲットとすると、1日の平均走行距離は30kmという調査結果からだ。そして気になるバッテリーの寿命については、劣化20%を寿命とした場合、充電サイクル1000回を目標に置く。1回の充電で150kmの走行と考えれば、1000回で15万キロとなり、理論上は従来のエンジン車の買い換えサイクルより長寿命となるからだ。
車両価格はコルトEVの場合、数千台の生産台数でバッテリーの価格を50〜60万円程度に抑えることで、車両本体価格200万円以下の価格設定を目指す。国の補助金を念頭に置くならば、従来車価格差の半額補助で実質150万円程度となる。ガソリンに比べて割安な電気を使用するため、この価格差ならば価格メリットもある。充電は専用充電器による家庭用電源という形をとれば、フル充電に現状で100V約10時間、200V契約で約3時間とのことだ。また、充電の仕方によってバッテリー寿命は大きく変化する。自動車単体だけでなく、最も効率的な充電サイクルも確立する必要がありそうだ。
電気自動車の将来はバッテリー開発にかかっているが、バッテリーの課題をひとまず置いて、インフラによってその弱点をカバーする方法もある。三菱が上げた電気自動車実用化への狼煙は国内にどう広まっていくのか。エコカーに興味のある者にとってはちょっと楽しみでもある。
(2005年5月掲載)