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書評『それでも僕はあきらめない』車いすから挑戦する生き様に“自分もひと花咲かせたい”と勇気づけられた


 2002年10月23日、鈴鹿サーキットでF1の前座レースに参戦し大クラッシュ。時速300kmを超えるフォーミュラカーが宙を舞い、フェンスの最上段に当たって落ちた。誰もが最悪を予想した。しかし、奇跡的にF3ドライバー・長屋宏和は死を免れた。そのかわりに頸椎損傷、四肢麻痺という重度障害を負うことになる。

 レースに限らず、今の世の中、いつ自分が車いす生活を余儀なくされるか分からない。自動車事故以外にも、病気から四肢麻痺を起こすことはあるのだ。もし、自分が「車いす生活者(チェアウオーカー)」になったなら、どうやって生きていけばよいのか? 肉体的な面はもちろん、精神的に立ち直れるのか……。ちょっと自信がない。

 でも、本書を読んでいると、人はどのようになっても、生ある限り、新しい人生が待っているのだと実感できる。投げ出すことはない。あきらめることはない。新しい目標に向かって生きていけるのだと……。
 だから、長屋は「だれがなんと言っても夢はF1チャンピオン!」だという。それを、実現するように、自分の環境を整え、先だけを見つめ走り続けている。

 1年9ヶ月に渡る日本とアメリカの入院生活にピリオドを打つと、障害者対応の自動車の運転に取り組み、さらにはハンドカートに出場し完走。指の自由がきかない長屋はハンドル操作などの面でハンディがある。にも関わらず、これほどまで回復したのは、彼の高い精神力と努力のたまものといえるだろう。

 他にも、“お洒落なジーンズを履きたい”と、チェアウォーカー・ファッションブランド「ピロ・レーシング」を立ち上げる。ジーンズは自らデザインや素材選びを行った。ヒップの縫い目をなくし長時間座っていてもお尻にやさしい作りは、彼ならではのアイディアだ。お尻に感覚がない障害者にとって、硬い縫い目は床ずれの原因になるのだそうだ。さらに、チェアウォーカーのためのウエディングドレスをデザインし、ファッションショーも開催した。

 もちろん、それには、家族や友人、周囲の理解と手助けが必要なことは言うまでもない。ただ、真に頑張る人、あきらめない人を、我々は応援したくなる。そんな長屋だから、彼のまわりには人が集まってくるのに違いない。

 長屋は中学時代、イジメにあっていたことがあると本書のなかで語っている。そんな彼の人生を変えたのがF1レースだった。レーサーになるという夢を抱き続けることで、イジメにも耐え、新しい仲間とも知り合えたのだ。レーシングカート参戦、フランスのレーシングスクール留学、F3へのステップアップ……。こうした経験が、現在の長屋の人との関わり方にも大きく影響しているに違いない。

 本を読んでいて、我々の多くは、きっと長屋ほど挑戦し続ける精神力も持ち合わせていないと感じる。それでも、彼のこれまでの生き様を知ると、夢を持ち続けることがいかに大きな力を発揮するか、人を輝かせるかを実感する。

 本書を読み終え、「私もまだあきらめる年齢じゃない。もうひと花咲かそう」と、前向きになっている自分に気づいた。

(文・松倉一夫)

『それでも僕はあきらめない』(長屋宏和)
●発行 大和出版
●価格 税込1570円
●体裁 四六判/240ページ

(2007年6月 6日 eJAFMATE編集部)

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